Megribaメンターインタビュー vol.3 今泉裕美子さん
【Megribaメンターに聞いてみよう!vol.3】
“Webサービス・アプリ開発、コンテンツ(映像・ゲーム・アニメ)分野の起業はハードルが高い?!成功のヒントは?”

今回は、Webサービス、アプリ開発、コンテンツ(映像・ゲーム・アニメ)分野での事業支援を得意とされている、今泉裕美子氏にインタビュー!
今泉さん、お久しぶりです!本日はよろしくお願いします。 早速ですがWebサービス・アプリ開発分野で起業や創業を目指す方々の相談は多いですか?
はい。コンテンツやWebサービス・アプリ開発系を専門にする創業支援者があまり数多くいらっしゃらないため、相談に来られる方が日々おられます。映像制作系も多いですね。
アプリ開発って聞くと、開発資金が結構かかりそうなイメージがありますが、資金調達についてのヒントやアドバイスはありますか?
開発するアプリやサービスの機能や階層にもよりますが、確かにアプリ開発は一定以上の開発費を要します。すべての開発を自己資金で賄うという発想は多少無理があると考えるのが自然でしょう。ですので、大方はアプリ開発に進むために資金調達を検討することになります。

資金調達の方法はどのようなものがありますか?
いくつか種類がありますね。金融機関からの融資により大半の資金を調達される場合もありますし、エクイティ投資をもとに開発されるケースもあります。またその両方を抱き合わせて、融資によってプロトタイプ制作をしたうえでマーケティングテスト等をし、PMF成果としてのトラクションを基に投資を得ていくパターンもあります。抱き合わせの場合は融資を組み合わせる事でレバレッジ効果もありますね。
エクイティ投資というのは、株式会社が新たに株式を発行して資金調達を行うことですね。株式による資金調達を視野に入れている方は、株式会社での事業展開を視野に入れておく必要がありそうですね。
他の資金調達方法として、以外と見落とされがちなのがクラウドファンディングの活用です。購入型であれば事前マーケティングや宣伝告知を兼ねられ、かつ資金調達も叶うので効率的な場合もありますし、投資型クラウドファンディングであればファンの醸成と資金調達の両方が達成できる可能性があります。

クラウドファンディングという選択肢もあるのですね。 アプリ開発は、“こんなアプリがあればいいのに・・・”という想いから始める方もいらっしゃるのかな?と思うのですが、一方、エンジニアリングに関する知識や技術がなくご自身で出来ない方がアプリ開発を伴うサービスでの起業や新規事業で開発部分を外注だと、かなりハードルが上がるイメージですが、実際にはどのようなケースが多いのでしょうか?
様々なパターンがあり、もちろんアプリ制作会社に外注をする場合もあります。またスタートアップでよく見られるのが、ファウンダー(創業者)の中にエンジニアが参画しているケースです。役員報酬という形で開発費を支払うケースもありますし、初期開発フェーズで資金が苦しい場合はストックオプションや成功報酬方式で乗り切るパターンも散見されます。もちろんエンジニアご自身が起業される場合はご自身で開発してしまう方もいらっしゃいます。
ほんとに色々なケースがあるのですね。 次に時間的なことをお聞きしたいのですが、開発をしてサービスをローンチするまでにはどれぐらい時間がかかるものですか?
それこそ当該アプリやサービスの中身によってかなり幅がありますね。アプリのジャンル、機能、階層の複雑さ、ネイティブアプリなのか通信型のWebアプリなのか、会員管理を伴うのか課金機能はあるのか?などなど中身によって開発期間が異なります。またゲームのようなものですとデバック(アプリの不具合を見つける作業)にもかなりの工数が必要となりますのでこちらも開発期間に影響することでしょう。

たしかにアプリと言っても形態や種類も様々ですよね。Webサービス・アプリ開発分野での事業は、始める前も開発や準備が長く大変そうなイメージなのですが、開発後に重要になってくるのはどのような事ですか?
アプリ開発での相談で多いのが、いいものと確信してアプリやサービス開発を終えたものの宣伝PRのノウハウがわからず顧客に情報が届かないまま資金が枯渇して事業がストップし、アプリやサービスが死蔵してしまうケースです。
アプリやサービスの内容によって宣伝PR戦略は異なってきますが、開発前の段階から開発と並行して認知促進や顧客獲得戦略も進めることが重要かと思います。
知ってもらうための「認知促進」をしないと、せっかく完成したアプリを使ってもらう機会がないまま、どんなに良いアプリでも、ユーザーに届けることができないままの宝の持ち腐れになってしまいますね。これまでに今泉さんが印象に残っている事業エピソードなどありますか?
まずひとつは資本政策に対する知識の重要性を痛感した事例です。コンテンツ開発には資金が必要となるので他人が投資を申し出てくれるとついつい当てにしてしまうのが人の気持ちというものですが、株主構成とシェア、それに伴う権限について基礎知識を持ったうえで投資してもらわないと後々意に沿わない経営を迫られる結果につながるリスクがあります。
なんだか難しそうです・・・。起業家の方にとっては資本政策は初めて、という方が大半ですよね。
出資を受け入れるという事は、自分の会社の株の一部を保持してもらうという事であり様々な権限を持ってもらうことと同意義である意味を理解しておく必要があるとも言えます。実際、権限を有した株主との衝突はエネルギーを消耗しますし経営者のモチベーション維持にも支障をきたすケースがあります。
もうひとつは事業パートナーの重要性です。法人単独で開発からパブリッシングまで一貫してもいいですが、力をもった事業パートナーと出会い協業した際に、事業規模が一気に拡大して成功に至るケースがあります。開発を進めながらもビジネスの可能性を広げるために様々なマッチング機会をとらえて活動するのも経営者の大事な仕事だと感じた事例がありました。

Webサービス・アプリ開発分野でも事業パートナーはとても重要ですね。
Webサービス、アプリ開発、コンテンツ(映像・ゲーム・アニメ)などの事業は、一般的に見れば当たりはずれのボラティリティが大きいビジネスだと思われがちです。実際たったひとつのコンテンツやアプリ等が大きく“当たる”と企業も急激に業績を伸ばすケースがままあります。そうすると「コンテンツが当たらなければ企業は経営を継続できない」と捉えてしまうかもしれません。
おっしゃるとおりコンテンツが重要で、更には競争も激しくビジネスが成り立つのが難しいイメージがあります。
日本における企業の廃業率が2022年で3.3% 1年後の生存率が96%、5年目で81.5%、10年目で66.5%と言われています。私も長年メンターとしてかかわっているコンテンツ分野専門のインキュベーション施設があるのですが、開設後17年の間に廃業した企業は5社程度、10年存続率は96%を超えています。安定した経営が難しいといわれるジャンルにおいて、なぜこの数字が達成されたのだと思いますか?
10年目の企業存続率が96%ということは、一般的な日本の10年目の企業の生存率66.5%より遥かに上ですね?!

はい、ヒントになるかもしれませんが、これまで支援してきた成功企業の社長が口をそろえて話すことがあります。
「打席に立ち続けることが重要。そのためには“継続”できる環境をつくること。つまり継続経営をするための戦略をたてること」というものです。
続けるからこそヒットするコンテンツが誕生するかもしれないし、そうでなくともコンテンツビジネスは何もオリジナルIPで勝負するだけが事業ではありません。よりマーケットニーズに応えPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成するコンテンツに寄与できるかが勝負となります。そのために支援者を含め様々な外部のノウハウや知見を活用しながら戦略的に経営をすることが鍵となるのです。
特に開発系コンテンツは、作り出す前のPMFがとても重要と考えます。起業家の方はどうぞ支援の力を存分に活用して、皆様の優れたコンテンツを継続して世に送り出してください。応援しています!

大切なことは事業を継続できる環境づくりとその戦略! 今泉さん、本日は貴重なお話を沢山ありがとうございました!山口市ではDXやデジタル活用も推進していますし、Megribaで開催したビジコンでもWebサービスやアプリ開発などのアイディアをお持ちの方もいらっしゃいます。様々なハードルがあると思いますがMegribaの支援メニューも活用頂き実現へ向けて一歩二歩と踏み出してもらえたら嬉しいです! 【インタビュアー:黒澤直子(Megribaインキュベーションマネージャー)】
<<<Megribaより>>>
今泉メンターに個別で相談できる、「Webサービス・アプリ開発個別相談会」を開催します。こちらもぜひご活用ください。今泉さんはコンテンツ(映像・ゲーム・アニメ)分野の知見もお持ちですのでこちらの分野での事業相談したい方もおすすめです。


今泉 裕美子氏
大学卒業後、広告代理店(現株式会社I&S BBDO)勤務の後、映画・映像製作プロデュース、映画ビジネスを学ぶ社会人向けスクールの立上げ、映画祭運営・洋画配給、コンテンツファンドの組成と案件開拓に従事する。
2008年より、ゲーム・映像・アニメ・CG等のコンテンツビジネスの創業支援を目的に東京都が設立した東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)にて、インキュベーションマネージャーとしてコンテンツ起業家を支援(現在はシニアメンター)。
東京都「スタートアップハブ東京」コンシェルジュ。荒川区ファッション系インキュベーション施設「イデタチ東京」IM、東京都中小企業振興公社「TOKYO起業塾 実践コース」「入門コース」「事業可能性評価事業エクイティファイナンス講座」講師。東京都アニメーション海外展開支援事業MIFA出展支援アドバイザー(2016年~)、日テレアックスオン新規事業アドバイザー兼講師、各種ビジネスコンテストやアクセラレーションプログラムのメンター等も務める。